"どうにかして最高の鑑賞体験を手に入れろ!"『カメラを止めるな』感想
(http://kametome.net/index.html)
話題の『カメラを止めるな』見てきました。
作品の内容云々の前に、この映画の制作費が300万円というツイートを見て、思考が全部それに引っ張られています。
制作費・300万円て安すぎませんか。秒速で億稼ぐ男、与沢翼の0.03秒分ですよ。いきなりなんだって思うかもしれんけど。なんとなく言いたかった。
ほかの映画の制作費と比較してみても、40年くらい前の映画「ルパン3世カリオストロの城」ですら、制作費は3億円なんですよね。
予告映像とかで大々的に「制作費3億円!」と宣伝していた。
カメラを止めるな、100本つくれるやん。
いや、それを言うなら『パイレーツオブカリビアン/ワールド・エンド』なんて、怒涛の製作費・300億円なんですよね。
300億ってなんだよ。300億は2003年のバチカン市国の国家予算に匹敵する額らしい。
カメラを止めるな、10,000本つくれるやん。
いやいや、国家予算繋がりで言えば昨年のアメリカ合衆国の歳出額は300兆円なんですよね。
カメラを止めるな、100,000,000本作れるやん。
この比べ方はナンセンスか。
制作のことなんて全然詳しくないけど、制作費300万円が超がつくレベルの低予算なのは想像つきます。
300万円であんな良い映画って作れるんですね。ひとえに脚本の勝利だなぁ。
そんな『カメラを止めるな』かなりオススメの映画です。
まさか『カメラのキタムラ』と同じようなイントネーションの映画がここまで面白いと思ってませんでした。ナメてましたすいません。
まだ見てない方、是非見に行ってください。
でも見る前には是非、何も調べないでください。
『カメラを止めるな』は、
"事前の情報が一切耳に入っていない状態"で、
劇場では"ほかの客も無反応な環境"で
鑑賞するのが、一番鑑賞体験とはしてよいものだと思うからです。
それが何故なのか、それは言えないのです。いうとつまらなくなってしまうからです。
事前の情報が入らないようにする、という点では予告編映像とかも見ちゃダメだし、フィルマークスとか映画情報アプリ・サイトの映画紹介文もダメなのです。
もう、なにも見てはいけません。
今、この映画に対して持っている情報が
「なんかつまんなそうなゾンビ映画なのにずいぶん話題になっているな」これだけな人。その人が、この映画を一番楽しめる人だと思います。もしこのブログを読んでくれている貴方がそうなら、騙されたと思って是非劇場見に行ってください。絶対楽しめるので!
そんでもって下に書いてある感想をもう一度見に来てください。頼むよ。
こっから先でネタバレありの感想を書きます。
注意してください。
つらつらと書いていきます。
この映画を見た人は、上に僕が「何も見ない・何も知らないまま見た方がよい」と
くどくど書いて来た意味をきっとご理解頂けると思います。
この映画って、
"作品について持っている情報”と
"映画を視聴する環境"
この二つによって、映画体験のクオリティがかなり左右される映画だと思うのです。
なぜなら、何も知らないままで見るのが一番面白いからです。
一見なんの変哲も『Z級のゾンビ映画』のその裏に、いかに面白い伏線が隠れていたのか。
それをなんの前情報もない状態から体験できる、というのが、
間違いなくこの映画における最高の鑑賞体験なのです。
しかし、全く無知の状態で映画館に辿り着くことは、当然のごとくとても難しいです。
例えば、下は映画のSNS的なアプリ『フィルマークス』の映画の紹介文なのですが、
こんな5,6行程度の文でも、見てしまったら、ぶっちゃけもうアウトなんですよね。
文末に、わざわざ「撮ったヤツらの話」とある。
これ見てしまったら、「ああこれ単純なZ級のゾンビ映画、っていうわけじゃねえんだ」ってバレてしまう。
でもそれじゃダメだと思うのです。この映画を観に行くにあたって、
「なんかつまんなそうなゾンビ映画なのにずいぶん話題になっているな。何もわかんねえけど、見に行こう」
これくらい無知なのが、一番良いのです。
そんでもって、そのゾンビ映画への期待を"良い意味で見事に裏切る"、という芸当を魅せてくれるのが、
この映画の核となる部分だと思うからです。
1mmでも「単なるゾンビ映画じゃねえんだ」っていう事前情報があるだけで、それだけで一歩引いたところから見えてしまう。それはこの映画の最高の鑑賞体験とはいえないものだと思うのです。
そういう意味で、鑑賞体験のクオリティを削がれる可能性(危険性)は鑑賞前のみならず鑑賞中にもあります。
それは劇場にいるリピーターの存在です。
この映画は、一度見てしまったら確実にもう一回見たくなる映画なのです。
冒頭30分の初見ではクッッソつまんないシーンが、2回目以降はめちゃくちゃ面白く見えてくるからです。
例えば監督役の日暮監督が神谷演じる男優に向かって「テメーはリハの時からグチグチ文句ばっか言いやがって!」って怒鳴るシーン。
これ、2回目以降見る人にはなかなか笑えるシーンだと思いますが、
でも、初めて見にきた人にとっては、こんなシーンで笑えるのなんて、おかしいんですよ。なんの文脈も知り得ていないので。
劇場に見にきて、もしここでのシーンで笑いに疑問を持ってしまったら最後、
その時点で、今見ている映像に伏線が張りまくられていることに、裏があることに気づかされてしまう。
だから、極論を言えばリピーターのいそうな劇場で初めて鑑賞することは、っつうか要はリピーターが無神経に鑑賞するようなとこで見るというのは、オススメ出来ないのです。
『カメラを止めるな』の映画鑑賞において、周りの初見の人の事を考えない、無神経なリピーターは、英語で言うところのspoilerつまりスポイラー=台無しにする人なのです。
この映画は劇場でさえスポイラーを警戒しなければならない難しい映画なのです。
つっても、このネタバレ対策として実際何かができるかというと、難しい。っつかムリなんです。なんやねんって話ですよね。ごめんなさい。
でも、なるべく東京でいうところの渋谷・新宿あたりなんかを避ければネタバレ野郎もきっと少ないんじゃないですかね。ここら辺のエリアは公開してから日も経っているし、なんかコアな映画好きが集まってきそうなイメージなので。
そこら辺避けるのアリなんじゃねえかな。
すいません、よくわかりません。
いやしかし、もちろん2回3回とリピートしてこの映画を鑑賞する方を悪くいうつもりもありません。この映画のユニークかつ面白いところが、まさに"Z級の映像を見たことが報われる"ことだと思うからです。
つまりは冒頭30分のつまらん映像を見た"甲斐がでてくる"ということ。だからリピートしたくなるのも無理はない。
ただ、初めて見に来た人も、同じく冒頭30分を"つまんなく見てもらう"ための配慮をする必要はあると思います。
めんどくせえかもしんねぇけど。
そう、最初の30分って初見ではクソつまんねえんですよ。
大体のクソ映画って、見たあとに残るものって「お、時間を無駄にしたな」っていう虚無感とモヤモヤだと思うのですが、
この映画の冒頭30分の「one cut of the dead」の部分も、初見ではまさしくそれに当たるじゃないですか。クソつまらん。
クソ映画がどうしてクソ映画たるかっていうと、ひとえに「理由(わけ)がわからない」ことが多すぎるからだと思うのです。
「なぜ、このタイミングでこんな表情してんのか」とか
「なぜ、このタイミングで走り出すのか」
「なぜ、そんな理由でここまでの凶行にいたるのか」とかみたいな。理解できないことが多いから、ストレスになってクソ映画認定されるんすよね。
でも、この映画は後半でその"答え合わせ"ができるようになっている。
大抵のクソ映画が撮る方の自己満足に終わる中、この映画は「それがどうしてクソになったのか」というのを種明かししてくれる、鑑賞者の方に寄り添ってくれるタイプの映画なんですよ。だからめちゃくちゃ面白い。痛快っていう表現が似合う気がします。
それゆえに、一番最初に見る冒頭30分は、ひたすらにつまらなく思えるのが「正解」なのです。
だからその裏が見えないために、何度もいうけど
「何も知らない状態で劇場にいって」、「何も知らされない劇場で観ている」というのが、最高の鑑賞体験のために必要なのです。
かく言う僕も、テレビでこの映画の紹介を見ていたらフッッツーにネタバレを見させられて、本来得られるはずだった面白さが確実に半減した身です。
「あの番組見てなかったら、絶対もっと楽しめただろうに」という思いを胸にひめながら、半分悲壮感とともに観ていました。
だからこそ、まだ何も知らない人には知らないまま見て欲しかったのです。
人間は、一度知ってしまった事を忘れることはできませんからね。いいこと言ったな。
まあネタバレ食らった僕でも充分面白かったので、
前知識0であればめっちゃくちゃ楽しいはずです。観た人、楽しかったですよね?
以上
つづく,